【失敗の科学】失敗を恐れるな
本書は、今の私にはとても耳が痛い、しかし本当に重要なことを教えてくれる良書でした。
失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織 [ マシュー・サイド ]
「失敗は成功のもとである」とは、昔からよく聞く言葉です。
私も学生時代、会社に入ってからこの言葉を幾度となく聞き続けてきました。
しかし、実際に失敗をするのは怖いです。失敗をして怒られたり、自分への評価が下がるくらいであれば、失敗はしたくはありません。頭の中で、失敗をすることのデメリットの方がメリットよりも大きいと考えているのかもしれません。
本書では、あらゆる業界の実例をもとに、失敗から学ぶ組織と反対に失敗を繰り返す組織の違いについて考察しています。
前者の例としては、アメリカの航空業界が挙げれられています。航空業界では、利用者は増加しつづけているのに、航空事故の件数は減り続けています。一方で、アメリカの医療業界では、医療事故は年間100万件以上にのぼり、毎年数万人の方が回避可能な医療過誤により命を落としているそうです。では、その違いは何なのか。
航空業界は、事故発生時には第三者機関による徹底的な原因の究明と、再発防止に注力されます。ブラックボックスという、事故発生時の状況を記録する装置に代表されるように、事実をしっかりと残して、その事実から何が悪かったのか、どうすればよかったのかといったことが徹底的に議論されます。失敗が悪いことではなく、成功するためのStepとして考えられているのです。
一方で、医療業界では、クローズド・ループ現象が発生し、失敗を次の改善に活かせていないことが原因として挙げられます。完璧でないことは、すなわち無能であるという業界の雰囲気があるからこそ、その失敗を隠蔽しようとしてしまい、組織の改善に活かされないのです。
本書で特に印象的だったのは、確証バイアスについての話です。
特にエリートと呼ばれる人や、組織の上層部にいる人に陥りやすい事例のようです。自分の考えは絶対に正しい、間違っていないと思い込んでいることにより、自分にとって都合の良い情報ばかりを集め、結果的に自分が正しかったと主張し、反対意見や主張の誤りを無視します。
これがとても厄介なのは、間違いを間違いだと思わない点です。
失敗から学べれば、次に活かし自分の成長につながりますが、確証バイアスの強い人だとその機会を自らなくしているのです。
日本の企業、政治が失敗から学ぶオープン・ループな体質を作るにはどうすればよいでしょうか。
私は、まずは教育の在り方を変えていく必要があると思っています。
点数至上主義や、間違いは恥ずかしいという雰囲気を、小さいころから経験しているからこそ、人々はクローズドな環境に居心地の良さを感じるのではないかと思います。
まずは教育から失敗の重要性を説き、失敗から成功につながる経験を学生に積ませることができれば、社会や政治において、オープン・ループな体質を作り上げることができるかと思います。
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